平成の文学とはなんだったのか:激流と無情を越えて

平成文学の三十年を一望し、縦横無尽に語り尽くす。昭和から活躍していた作家たち、また、平成になって頭角を現した作家たちが底力を発揮したのがこの三十年であった。彼ら、彼女らの小説は時代を映し、問いを提起する。わたしたち読者はそれをどう受け取ろうか。

著者はふたりとも息の長い読書を続けて来た。本書はそのふたりが自由闊達に語り合い、論じる喜びにあふれている。今回、10のテーマを立てて多角的に対談を試みた。ところどころユニークな逸脱もあり、なにげないひと言に時代の真実がこもることもある。また、平成を代表すると思われた作品「十選」やコラムも別立てにしてある。ぎゅっとコンテンツを詰めているが、けっして硬さや重さはない。

楽しみながら読み進められる平成文学のやわらかいガイドブックにもなっている。

平成文学「十選」 重里徹也選
『羽根と翼』黒井千次
『海辺のカフカ』村上春樹
『博士の愛した数式』小川洋子
『半島を出よ』村上龍
『弱い神』小川国夫
『路(ルウ)』吉田修一
『冬の旅』辻原登
『還れぬ家』佐伯一麦
『土の記』高村薫
『ある男』平野啓一郎

平成文学「十選」 助川幸逸郎選
『ねじまき鳥クロニクル』村上春樹
『聖耳』古井由吉
『博士の愛した数式』小川洋子
『蹴りたい背中』綿矢りさ
『ハーモニー』伊藤計劃
『ヘヴン』川上未映子
『マザーズ』金原ひとみ
『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』大江健三郎
『薄情』絲山秋子
『流転の海』宮本輝

目次

平成文学 重里十選
平成文学 助川十選
はじめに

1. 文芸豊穣の時代
2. 平成期の村上春樹
3. 多様に進化する「私小説」
4. 恋愛から同志愛へ
5. 大震災の後で
6. 物語は死なない
コラム(重里徹也)共同体への叶わぬ夢
7. 越境する作家たち
8. 批評はどこへいくのか
コラム(助川幸逸郎) 古井由吉と「近代以前」
9. 「土地の力」を感じて
こんな小説も忘れられない 三選(助川幸逸郎)
10. 令和の書き手はどこに
こんな小説も忘れられない 三選(重里徹也)

あとがき

著者プロフィール
重里徹也(しげさと・てつや)
文芸評論家 一九五七年、大阪市生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)ロシア語学科卒。毎日新聞で東京本社学芸部長、論説委員などを務めた。二〇一五年から聖徳大学教授。著書に『文学館への旅』(毎日新聞社)、『司馬遼太郎を歩く』(共著、同)、『村上春樹で世界を読む』(三輪太郎との共著、祥伝社)、『つたえるエッセイ』(助川幸逸郎との共著、新泉社)、聞き書きに吉本隆明『日本近代文学の名作』『詩の力』(新潮文庫)など。

助川幸逸郎(すけがわ・こういちろう)
日本文学研究者 一九六七年、東京都生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒、同大学院文学研究科博士課程修了。岐阜女子大学文化創造学部教授。著書に『光源氏になってはいけない』(プレジデント社)、『謎の村上春樹』(プレジデント社)、『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』(朝日新聞出版)、『つたえるエッセイ』(重里徹也との共著、新泉社)など。

ISBN 978-4-909818-13-3
A5判 224頁
定価 税込1760円(税率10%)
2019年9月20日

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